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歯根の治療(根管治療)の方法パート3〜次亜塩素酸ナトリウムと水酸化カルシウムについて〜

院長ブログ

みなさんこんにちは。
今回は、歯内療法のルールである基本コンセプトの中で、細菌を取り除く処置の、洗浄剤である次亜塩素酸ナトリウムと、貼薬剤の水酸化カルシウムについてお話しします。

次亜塩素酸ナトリウム水酸化カルシウムも、根管治療でターゲットになるすべての細菌に対して、効果的ではありません。しかし、次亜塩素酸ナトリウム水酸化カルシウム以上の効果を持つ薬剤が、現在のところありません。

ただし、両者とも、強い抗菌作用を持ち、根管治療で頻用されている薬剤です。

以下、それぞれについて、簡単にお話しします。

次亜塩素酸ナトリウム

洗浄剤を選択する要件は、以下の4つです。
1.抗菌効果
2.組織溶解作用 (悪いところを溶かして流す)
3.毒性が低い
4.スメア層の除去(スメア層とは、削りカスが根管にこびりついた時にできる層のこと)

4つすべての要件を満たす洗浄剤は現在ありません。また、次亜塩素酸ナトリウムには、スメア層を除去する能力は持ち合わせておらず、根管治療を行う際には、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)という洗浄剤を併用しています。次亜塩素酸ナトリウムで細菌を大幅に減らし、EDTAでスメア層を取り除いて根管をきれいにします。

根管を洗浄するイメージは、排水口のおそうじを思い出していただくとわかりやすいです。排水口を中性洗剤でそうじするとキレイにはなりますが、カビをなかなか落とせません。しかし、カビ取りを目的とした洗剤を使うと、カビをラク〜に落とせますよね。役割として、次亜塩素酸ナトリウムは中性洗剤、EDTAがカビ取り洗剤です(カビ取り洗剤の成分に次亜塩素酸塩が入っています。あくまでも、成分ではなく、根管洗浄剤の役割についてのたとえ話です)。

さて、次は根管治療で使う次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度についてです。濃度をうすくすれば抗菌作用は弱く毒性も低い、濃度を濃くすると抗菌作用は強くなる分、毒性も強くなります。それでは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度をどのくらいにすれば、根管治療でターゲットになる細菌を減らすことができるのでしょうか。

Byström(1)やCvek(2)らは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度は、0.5〜5.0%であれば抗菌作用に差がない、と報告しました。当院では、中央付近の2.5%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を作っています。

水酸化カルシウム

水酸化カルシウムは、強アルカリのため、強い抗菌作用を持っています。水酸化カルシウムの抗菌効果が発揮されるために必要とする期間は、1週間といわれています(3)ので、治療と治療の間隔は、機械的拡大後、少なくとも1週間あけて、患者さんと次のお約束をします。

さいごに

以前のブログ:基本コンセプトについてお話ししたように、根管の中は、どうしても無菌化できません。

理由は、

  1. 根管の解剖は複雑だから
  2. 洗浄剤貼薬剤を使っても除去できない細菌の存在

図1は、歯の中を透明にしています。黒いところは歯髄といって「神経」と一般的にいわれています。

赤いまるで囲ったところも「神経」の一部で、「イスムス」といいます。イスムスに細菌が入り込んでいると仮定して、除去を試みたとしても、規格化されたファイルイスムスの中に入ることはできません。

洗浄剤イスムスの中の細菌を洗い流そうとしても、貼薬剤イスムスに浸透させようとしても、どこまで洗浄剤貼薬剤が到達できるかわかりません。

また、冒頭でお話ししたように、歯の根の先の病気あるいは膿の原因であるすべての細菌に対して、効果的な洗浄剤貼薬剤は現在のところ、この世に存在しません。
よって、根管の複雑な解剖形態やすべての細菌に対して効果をもつ薬剤は存在しないことが、歯内療法(根管治療)の成功率を下げている原因でもあります。

ただし、最初に歯の神経を取るときの成功率は高く、一般的に9割といわれています。高い成功率を達成するためには、基本コンセプトを厳守しなければなりません。また、患者さんには再治療を繰り返して欲しくありません。あらゆる治療にはルールがあって、歯内療法(根管治療)のルールが浸透すればいいな、と思っています。

ルールの厳守にもとづき、ラバーダム機械的拡大洗浄貼薬は必須で、歯内療法(根管治療)をより安全に正確に行うために、マイクロスコープが活躍してくれます。ルールは、歯根の先の黒い影あるいは膿(根尖性歯周炎)の原因である細菌を根管から取り除くことにもとづきます。ルールを厳守することによって、高い成功率を導き出してくれるのです。ルール(基本コンセプト)を守ることは、とても重要です。

では、次回のブログはテイストを変えて、久しぶりのスタッフ奮闘記です。お楽しみに。

  1. Byström, A., and G. Sunvqvist. “The antibacterial action of sodium hypochlorite and EDTA in 60 cases of endodontic therapy.” International endodontic journal1 (1985): 35-40.
  2. Cvek, M. I. O. M. I. R., CARL-ERIK Nord, and L. Hollender. “Antimicrobial effect of root canal debridement in teeth with immature root. A clinical and microbiologic study.”
  3. Sjögren, U., et al. “The antimicrobial effect of calcium hydroxide as a short‐term intracanal dressing.” International endodontic journal3 (1991): 119-125.